#4 非現実だけではない、仮定法のニュアンスとは

ベストセラー英文法ドリルを生み出したMr. Evineの教え方とは? 本連載では、機械的な演習から脱して発信力を養うことを目指し、日常のさまざまな場面にひも付けたコア英文法の指導方法についてご紹介いただきます。
#4 非現実だけではない、仮定法のニュアンスとは
Q. 悩んでいる相手にアドバイスをする場面です。次の日本語を英語で話してみましょう。
「僕だったら君の彼女と話しません」
相手の立場に立ったアドバイスを仮定法過去でできる!
正解は、仮定法過去を用いたI wouldn't talk to your girlfriend. です。
この英文は次のように、If節が省略されたものですね。(If I were you,) I wouldn't talk to your girlfriend.
「現実には私は君ではないが」の気持ちを仮定法過去If I were youで表現できますが、この英文を「I≠you」であり非現実であるから仮定法過去なんだ、と生徒に考えさせると表面的な文法学習になってしまいます。あえてこうした場面で仮定法過去を用いることで、相手の立場に立った、丁寧で感じの良いアドバイスを伝えることができます。
仮定法過去を用いるよりも強い響きになるストレートな意見としては、次のように言い換えることも可能です。
Don't talk to your girlfriend.(彼女と話さないで)
You can't talk to your girlfriend.(彼女と話すことはできないよ)
You shouldn't talk to your girlfriend.(彼女と話さないほうがいいよ)
直説法と比較することで、より仮定法過去との違いがクリアになります。仮定法過去は仮定の話、非現実の話をする、といった表面的な押さえ方をするのではなく、どのような場面で仮定法過去が使えるのかを知ることで表現の幅が広がります。仮定法過去に限らず、文法で何を伝えたいのかが生徒に意識させたいポイントですね。
会話にひも付けたコア英文法

仮定法過去で用いる「過去形」は「距離感」です。仮定法の過去形がもたらす曖昧さが、直接的な物の言い方を避ける働きをします。この例文では「それができない!」という事実は同じですが、その伝え方がポイントです。
スピーキングにつながる!生きた英文を用いた作問例
Q1. [ ]に当てはまる語(句)をそれぞれの選択肢から4つずつ記号で選びましょう。
What would you do if you[are / were / will be] me?
(『ES【高校標準編】』問題204番より)
Q2. 日本語と同じ意味になるように( )に適切な英語を書きましょう。
「僕だったら、電車で旅をするでしょうね」If I ( ) you, I ( )( ) by train.
(『中学英文法を修了するドリル2』p. 151の例文より)
ポイントと正解
(1) if you were me「あなたが私だったら」と、相手に自分の立場に立った意見を求める場合にもこの仮定法過去を用いることができます。(2)相手の立場に立った仮定法過去。If節(If I were you)を省略しないほうが、より丁寧な話し方になります。
正解:(1)were (2)were, would, travel
「文型、品詞、時制、助動詞」など、日常英会話にも欠かせない「コア中のコア英文法」にフォーカス。単元ごとにコア英文法を整理するだけでなく、複数の単元をシャッフルして定着の確認を行う「シャッフル問題」により、さまざまな角度から知識を問いながら真の実力を身に付けることができます。
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中学3年間+αレベルのオリジナル問題400問(1日40題×10日間)を掲載。カテゴリーごとではなく、シャッフルして出題することにより、「真の実力」を試します。また、何度も違う形で同じ文法項目について問うことで、定着を高め、1題に複数の必須文法項目を織り交ぜることで、英語の総合力を鍛えます。
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最後にEvineから一言
非現実的な話をするという目的だけでは仮定法過去の使用場面は限られたものになりますが、今回のようなアドバイス表現を覚えておくと会話の幅が広がります。本文でも書きましたが、同じ事実でも、その事実をどう伝えるのかに関心を持つことが大切です。伝え方で、相手に与える印象は随分異なるもので、そこに焦点を当てた英文法の学び方があれば自然と発信力につながっていくはずです。また英語はコミュニケーションのツールであり、勉強ではありません。残念ながら勉強と考えさせてしまっている場合は、教える側の意識や工夫が足りていないのかもしれません。この連載は今回で最終回となります。最後までお読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール

兵庫県神戸市出身。オーストラリア、ニュージーランドでの2度のワーキングホリデーの経験と、何でも丹念に調べ上げる「根性の独学」で英語を習得。子供英会話講師、塾の英語教師、留学コーディネーターを経て、現在は神戸と大阪で社会人向けの「やりなおし英語JUKU」と学生向けの「Evineの英語塾」を主宰。大阪の専門学校エアライン学科にて「英文法&英会話」「TOEIC」クラスも兼任し、幼児から社会人まで、実際に使える英語学習指導に従事している。「Mr. Evine」として「Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル」シリーズ、「Mr. Evineのリスニング力向上ブック」シリーズ、『Mr. Evineの英文法ブリッジコース』(すべてアルク)など多数の教材を執筆。その他、学校専売品『英文法総合問題集 ES(エス)【はじめて編】/【高校入門編】/【高校標準編】/【高校発展編】』(すべてアルク)など著書多数。2020年春には、DVD『動画でわかる! Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル』をリリース。
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