#2 語順で変化するニュアンスの違いとは

ベストセラー英文法ドリルを生み出したMr. Evineの教え方とは? 本連載では、機械的な演習から脱して発信力を養うことを目指し、日常のさまざまな場面にひも付けたコア英文法の指導方法についてご紹介いただきます。
#2 語順で変化するニュアンスの違いとは
Q. これは隣人同士の会話です。より自然な返答文として正しいものを選んでください。解答の根拠も考えましょう。
Hey, didn't your house use to have an awning* over the front door? *awning=日よけ
(A)Yes, but the storm we had last fall blew it off.
(B)Yes, but it was blown off by the storm we had last fall.
語順に注目!会話を進める「談話能力」が必要!
「談話能力」とは、実際に会話をしている場面に合わせて、単文を自然な流れで適切につないでいくスキルです。以前、私の教室に在籍する中高生にヒアリングをしたところ、こうした分野を学校で指導された経験はない、という生徒が大半でした。日本語では低学年のうちから同級生、初対面、目上の先生など、自分が置かれた立場や状況の中での適切な言葉遣いについて、親からも教育を受けてきたはずですし、一方の英語については表面上の文法知識だけでいいはずがありません。今回の場面でも、相手の質問を受けた自然な反応があるはずです。正解は英文(B)ですね。
文脈を無視して1文だけで考えれば、文法的にはどちらも正解です。
(○)The storm we had last fall blew it off.
(○)It was blown off by the storm we had last fall.
では何を基準に正解を決めるのか、になりますが、今回は"情報価値"に焦点を置きます。the stormの位置に注目してください。ここで話題になっているのは、日よけがない原因ですね。それは、the stormです。an awningを言い換えたitよりもthe stormに情報価値があります。英語には「文末焦点」の考え方がありますから、情報価値がより高いthe stormを後ろに置こうとすれば、自然と能動態よりも受け身の英文(B)の語順になってくるわけです。1文では文法的に正しい英文も、つなげると文脈的に不自然になる場合があります。学習の初期段階では1文を正しく書くことのみを重視してしまいがちですが、最終的には相手を意識して会話を進めていく、この「談話能力」を身に付けることが重要ですね。
会話にひも付けたコア英文法
文脈に合わせて語順をアレンジすることが重要です。特に生徒にとってなじみのあるSVOO文型とSVO文型の言い換えや、能動態と受け身によるニュアンスの違いをしっかりと理解させましょう。

スピーキングにつながる!生きた英文を用いた作問例
Q1. 自然な意味になるように( )内の語を並べ替えましょう。
"Emma is wearing a nice hat. -- Yeah, ( it / her / I / for / to / gave ) her birthday."
(『ES【はじめて編】問題38番より』)
Q2. 自然な返答として正しいものを選びましょう。
"What did the guy do?-- (A) A promise was broken by him. (B) He broke a promise."
(『Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル2』「受け身の表現」P. 168より)
ポイントと正解
Q1. 前置詞の有無をヒントにすることもできますが、文脈を意識して解答させたい問題です。ここは話題になっているa nice hatよりも、あげた相手のherに焦点を置くのが自然です。
Q2. a promiseは新情報のため、主語として文頭に置くのは英語らしくありません。
正解:Q1. I gave it to her for Q2. (B)
中学1年生~中学3年生で学ぶ基本英文法19項目を、2つのステージに分けて構成。
必勝☆演習シリーズ 10日間完成! 英文法総合問題集 ES【高校入門編】
中学3年間+αレベルの問題400問(1日40題×10日間)を掲載。
必勝☆演習シリーズ 10日間完成! 英文法総合問題集 ES【高校標準編】
中学の復習問題と高校基礎~標準レベルの問題400問(1日40題×10日間)を掲載。
必勝☆演習シリーズ 10日間完成! 英文法総合問題集 ES【高校発展編】
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最後にEvineから一言
日本語でも話し方が下手だな、と感じられる生徒が増えたような気がします。話し方を考えずに思いついたまま言葉を発信している生徒たちにとって「文末焦点」などの考え方は確かに難しいかもしれません。ですが、情報をどのように伝えるのか、相手にどう理解してもらうのかは日本語でも普段から工夫しているはずですし、そうするべきですよね。英語を勉強ではなくコミュニケーションツールとして考え、英語の語順を工夫すると同時に、日本語の話し方も学ぶ機会になればと思います。
著者プロフィール

兵庫県神戸市出身。オーストラリア、ニュージーランドでの2度のワーキングホリデーの経験と、何でも丹念に調べ上げる「根性の独学」で英語を習得。子供英会話講師、塾の英語教師、留学コーディネーターを経て、現在は神戸と大阪で社会人向けの「やりなおし英語JUKU」と学生向けの「Evineの英語塾」を主宰。大阪の専門学校エアライン学科にて「英文法&英会話」「TOEIC」クラスも兼任し、幼児から社会人まで、実際に使える英語学習指導に従事している。「Mr. Evine」として「Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル」シリーズ、「Mr. Evineのリスニング力向上ブック」シリーズ、『Mr. Evineの英文法ブリッジコース』(すべてアルク)など多数の教材を執筆。その他『英文法総合問題集 ES(エス)【はじめて編】/【高校入門編】/【高校標準編】/【高校発展編】』(すべてアルク)など著書多数。今春、DVD『動画でわかる! Mr. Evineの中学英文法を修了するドリル』(アルク)をリリース。
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